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札幌高等裁判所 昭和43年(ラ)6号 決定 1968年2月15日

抗告人 松原トシ(仮名)

相手方 吉沢ハナ(仮名)

相手方 山田幸子(仮名)

相手方 水野昌子(仮名)

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

抗告代理人は、「原審判を取り消す。原審判添付の共同相続財産目録記載の不動産につき適正な遺産分割の裁判を求める。」旨申立てた。その理由は別紙「抗告の理由」に記載するとおりである。

本件記録中の戸籍謄本四通(記録七丁ないし一〇丁、一二、一三丁)、戸籍抄本一通(同一一丁)、登記簿謄本七通(同一四丁ないし三四丁)および原審判添付の札幌家庭裁判所昭和四一年(家イ)第八八七号遺産分割請求調停事件調停調書(同四二ないし五〇丁)によれば、亡吉沢三郎が昭和三七年一一月二八日死亡したので、同人につき遺産相続が開始され、相続人たる抗告人、相手方らのほか申立外吉沢秀夫および菅沼ハルの六名の間でその遺産の分割につき札幌家庭裁判所昭和四一年(家イ)第八八七号調停事件が係属したが、昭和四二年二月一六日原審判添付の共同相続財産目録記載の不動産七筆を抗告人および相手方山田幸子(各持分九〇分の三二)相手方吉沢ハナ(持分九〇分の一〇)相手方水野昌子(持分九〇分の一六)の共有とすること等を内容とする調停が成立し、右不動産七筆につきその旨の所有権移転登記を経由したことが認められる。

ところで遺産を組成する各個の不動産につき、共同相続人の合意をもつてその中のあるものを共同相続人中の何人かの共有と定めることも遺産分割の方法として適法と認むべきであり、そのような合意の成立によつて遺産の分割は完了したものと解すべきであるから、論旨のうち前記調停によつて右当事者間の遺産分割が完了したとの認定が誤りであるとする部分は理由がない。

そして以上のようにして設定された共有関係は、遺産の共同相続を直接の原因とする従前(遺産分割調停前)の共有関係と同一のものではなく、当事者の合意によつて新たに設定された通常の共有として民法第二四九条ないし第二六二条の適用によつて律せらるべきものであるから、遺産の分割に関する民法第九〇七条ないし第九一四条の適用を受けるものではない。

されば論旨のうち「前記遺産分割調停においては持分の分割が定められたのみであり、その後の分割も従前の手続の延長たる性質を有するものであるから、かかる場合の分割は民法相続編所定の遺産分割手続によるべきである」との部分は独自の見解であつて採用に値しない。

また相続財産の特殊性から遺産分割の根拠法令は民法第九〇七条ないし第九一四条、家事審判法第九条第一項乙類第一〇号によるべきであるとする抗告人の主張も、遺産分割が既に前示調停によつて完了していると解すべき以上、立論の前提を欠き排斥を免かれない。

果してしからば、被相続人亡吉沢三郎の遺産はすでに共同相続人間に成立した前示調停によつて有効に分割を完了しているものとして、本件遺産分割の申立を却下した原審判は相当で本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし、抗告費用は抗告人に負担させて主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 野本泰 裁判官 今富滋 裁判官 潮久郎)

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